♯003 ため息とともに…

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モデルの田中美保ちゃん、大好きなんです!

だってほら、可愛い過ぎません?

なんだかこう…

何と言うか…

ホント良いよね~…

…………………………

ハッ!あいやいや~!ちょっとボーっとしてしまいました!すいませんね、はははっ~!

それにしても「女の微笑み」というのは我々男からすれば非常に魅力的なものです。それは何やら人知を超えた神秘的な力すら感じる事もあるわけですが、あの紅梅のような愛らしさや水仙のような淑やかさはどうですか!向日葵のように無邪気かと思えば桔梗のように艶かしい…まるで四季折々の花のごとく様々な色香を放つ彼女達に心迷わされぬ日はありません!

しかし、そんな彼女達のハートを射止める事もまた「男のロマン」であり、野望であり、甲斐性であるわけですが、それは人生の目的の一つと言っても決して過言ではありません!なんせ「ヒゲとボイン」のボインの方ですからね!それを手にする為ならば男達は持てる力を振り絞り、荒れ狂う嵐の海へも灼熱の炎の中へも果敢に向かって行けるのです。まさにパワー・オブ・ラブ!

女の微笑み…

それは勝利へと導く女神の加護のごとく男達のパワーの源泉になる事でしょう!ただし、それ故に舵取りを間違えて身を滅ぼした男達からすれば奈落へと誘う悪魔の罠でしかないのかも知れません!

そして紀元前8世紀、古代中国は周王朝の時代、その「微笑み」故に後に悪女のレッテルを貼られた一人の女性がいたのです。

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幽王嬖愛褒娰 褒娰生子伯服…

「おい!なんで周が滅んだか知ってるか?」
「なんや急に!周って、あの周王朝の事かいな?」
「せやがな~!何でも幽王が寵愛した褒娰(ホウジ)っちゅう女が原因やっちゅう話や。」
「褒娰!褒娰さんってどんな人やったん?」

欲廃申后 并去太子宜臼 以褒娰為后 以伯服為太子…

「それはそれは別嬪やったそうやで!幽王も元々いた正妃を廃して、褒娰を新たに正妃にしたくらいやからな。」
「え?奥さん取替えよったんかいな!君みたいな事しよってんな!」
「アホ!いらん事言わんでええねん!まあ、ええ女を侍らしたかったっちゅうのは分からんでもないわな…」

褒娰不好笑 幽王欲其笑 萬方 故不笑…

「ただし、幽王にも一つ問題があったんや。」
「なんや、問題って?」
「褒娰は決して笑わんかったんや。美味いもん食おうが贅沢な品を贈ろうが、幽王が何してもあかんかったんや!困るで~しかし!」
「やっぱり別嬪さんの笑顔は見たいわな。」

幽王為烽燧太鼓 有寇至 則挙烽火 諸侯悉至 至而無寇 褒娰乃大笑…

「そんなある日の事や、緊急の際に上げる烽火が上がりよんねん!でもそれは手違いでただの誤報やったんや。」
「そんな事したら諸侯が集まってしまうんちゃうの?」
「せやがな~!お国の一大事やと思って宮廷に集まった諸侯やけど、何もないから帰るしかないがな~!茫然とするがな~!でもそんな諸侯を見てなんと褒娰が笑ったんやがな~!」

幽王説之 為数挙烽火 其後不信 諸侯益亦不至…

「幽王さん嬉しかったやろね!」
「嬉しいも何もこのおっさん、それから何もないのに烽火上げまくりよんねん!そら褒娰の笑顔見たい言うても振り回される諸侯が大変やで~!」
「褒娰さんあれやね、ツンデレ系やね!烽火ツンデレ!」
「…お前の言うてる事よう分からんわ。」

又廃申后 去太子也 申侯怒 与繒・西夷・犬戎攻幽王…

「そうこうしてたある日に、前の嫁の親父が異民族を引き連れて攻めて来よったんや!」
「え!前の奥さんのお父さんが!えらい怒ってはるんやろうね。」
「そらそやで~!自分の娘を追い出して若い女とよろしくやっとるんやさかい…」
「君も気つけた方がええで。」
「せやな………アホ!いらん事言わんでええねん!」

幽王挙烽火徴兵 兵莫至 遂殺幽王驪山下 虜褒娰 尽取周賂而去…

「ほんでどうなったん?」
「緊急事態やと思った幽王は烽火を上げて諸侯に連絡したんやけど誰一人集まらんかったんや。」
「そっか!褒娰さんの笑顔見たい言うて普段から烽火上げてるから諸侯も信用せえへんかったんや!」
「せやがな~!後の祭りやがな~!結局幽王は殺されて褒娰も連れ去られてしまうんや。」

周室衰微 諸侯彊并弱…

「それから周は衰退していき、中国は春秋戦国の動乱の時代へと入っていくんや。」
「幽王さんが誤った判断をしたのは褒娰さんの美しさに惑わされたっちゅう事やね!」
「せやがな~!美しい女には気つけなあかんっちゅうこっちゃ!」

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国の危機管理システムですら不能にしてしまう褒娰の美しさとは一体どれほどのものだったのか、出来る事なら一度お目にかかってみたいものです。

…それにしても、幽王は褒娰と出会いさえしなければ、道を踏み外す事はなかったのでしょうか?

第12代王である幽王が即位して間もない頃に大地震が起きます。3つの川が氾濫したという事なので、おそらく人々は生活に難儀した事でしょう。にもかかわらず、幽王は遠乗りや狩猟三昧、昼夜を問わず酒宴を開いては酒に溺れる始末です。本来ならば、街の修復や治水工事などやるべき事は多々あるのに、まるで「地」を顧みようとしません!それでは国民の不満は募る一方です!その上、有能な人材を抜擢せず、狡猾で媚びへつらいが上手な口先だけの人物を登用し、挙句の果てに狼煙ばかり上げて諸侯の信用を失くしたものですから「人」が遠ざかるのも当然です!

「地」と「人」を疎かにした幽王に「天」の理があるとは到底思えません!

もちろん何処ぞの知恵者によるピンク・トラップである可能性も否定は出来ませんが…

しかし、結局のところ歴史は褒娰が「元凶」である事を望んだのです!

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昔自夏后氏之衰也…

「でも褒娰さんそんなに綺麗なんやったら一度お相手してほしいもんやね!」
「やめとけ!やめとけ!褒娰は人間ちゃうって噂もあんねんぞ!」
「え?ほんまかいな?」
「…それは褒娰が生きた時代よりもさらに800年ほど昔、中国最古と言われる夏王朝の威光に陰りが見え始めた頃の話や…」

有二神龍 止於夏帝庭而言曰 余褒之二君 夏帝卜殺之与去之与止之 莫吉 卜請其漦而蔵之 乃吉…

「2匹の龍が『我々は褒の国の先祖である…』言うて夏王の前に現れよったんや!」
「2匹の龍?何や不思議な話やな!」
「せやろ!それで夏王はこの龍を殺したろかどうしたろか考えよるんやけど、占師が『龍の吐く泡を貰い受けて保管する』のが吉と出たって言いよるんや!」

於是布幣而策告之 龍亡而漦在 櫝而去之…

「ほんでや、その事を龍に言うたら龍は消えて泡が残ったからそれを箱に入れて保管しといたんや!」
「ふ~ん…不思議な事もあるもんやね。ところで龍の吐く泡って一体何?」
「そんなもん知らんがな!とりあえず泡や!泡!」

夏亡 伝此器殷 殷亡 又伝此器周 比三代 莫敢発之…

「それから夏王朝が滅んで殷王朝が興り、時は流れて殷王朝が滅んで周王朝の時代になるんやな!」
「え?じゃあ箱はどうなったん?」
「その間、箱は代々受け継がれて一回も開けられた事はなかったっちゅうこっちゃ!」

至厲王之末 発而観之 漦流于庭 不可除…

「せやのに厲王っちゅう耄碌ジジイが箱開けてしまいよんねん!」
「誰や?その厲王さんって?」
「幽王の祖父にあたる人やねんけどな、箱開けたら泡が溢れ出しよって辺り一面泡だらけやがな!えらいこっちゃやで!」

厲王使婦人裸而譟之…

「それから厲王さんどうしはったん?」
「なんとや!婦人達を裸にしてやな、泡に向かって卑猥なポーズをさせよったわけや!」
「なんやそれ?アグネス・ラムみたいなやつか?」
「お前は何を言うてんねん!アグネスは卑猥やなくてセクシーや!」

漦化為玄黿 以入王後宮 後宮之童妾 既齓而遭之 既笄而孕 無夫而生子 懼而棄之…

「すると驚く事にやな、泡は一匹のトカゲになりよったんや!」
「え?そんな奴おらんやろ?」
「さらに驚く事にやな!そのトカゲが後宮にいた少女に飛びついて消えてしまいよったんや!しかもや!年月が経って年頃になった少女は、なんとHもしてないのに身篭って赤子を産みよったわけや!ほんまオカルトやで~!その後、不吉やから言うて赤子は棄てられる事になるんや。」

宣王之時童女謡曰 檿弧箕服 実亡周国 於是宣王聞之 有夫婦売是器者 宣王使執而戮之 逃…

「やがて厲王が死んで子の宣王が引継ぎよるんやけど、ある時に『山桑の弓、箕木の箙(※えびら:矢を入れておく容器のこと)、まこと周を滅ぼす…』ちゅう歌を耳にしてしまいよったもんやから、なんや心配しよってな!」
「そらそんな意味深な歌聞いたら宣王さんも不安になるわな。」
「せやろ!ほんでその時それらの道具を売ってる夫婦がおるって報告があってな、宣王も不安やから言うて夫婦を捕まえて殺せって命令出っしょんねん!でも逃げられてしまうんやけどな。」

於道 而見郷者後宮童妾所棄妖子 出於路者 聞其夜啼 哀而収之 夫婦遂亡犇於褒…

「夫婦は何処へ逃げよったん?」
「夫婦は『褒の国』に逃げよんねんけどな、その道中で路上に棄ててあった赤子を拾いよんねん!しかもその赤子は例の赤子やねん!」
「え!例のって、あのトカゲのかいな?」
「せやがな~!夫婦は事情を知らんやろ!不憫に思って一緒に連れて行っきょんねん!」

褒人有罪 請入童妾所棄女子者于王以贖罪 棄女子出于褒 是為褒娰…

「ほんで数年後や、その赤子は美しい女に成長して周王朝に召抱えられよんねんけどな、実はその女こそが後に幽王の正妃となる、褒娰本人なんや!」
「え!その赤子が褒娰さんになるんかいな?」
「せやがな~!ホラーやがな~!これでお前も褒似の正体分かったやろ!だからもう諦め諦め!!」
「えげつない話やな~!」

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この出生伝承が今日まで語り継がれている事自体が、褒娰が「元凶」である事を歴史が認めたという事なのでしょう。しかし、まるで化物扱いです。

…それにしても、この伝承は褒娰をただ単に陥れる為だけに語られたのでしょうか?

周王朝もまた盛者必衰の道を歩んだわけですが、厲王はそれを加速させた王の一人でした。賢者を遠ざけ愚者を登用し、暴政を布いては国民を虐げ苦しめる、それでいて本人は贅沢な暮らしぶり…そんな厲王に国民は怨みを募らせます。非難の声があがるのも当然です。しかし、厲王は自分を悪く言う者を監禁しては次々と処刑していったのです。やがて国民は自分が密告される事を恐れて何も喋らなくなり、市中で会っても目と目を合わすだけ…それでは国に活気は生まれません!やがて国民の不満は爆発して暴動が起き、厲王は都を追われる事になりました。

次期王である宣王ですが、一時は周王朝の威光を回復させるものの、諫言に耳を貸さずに籍田の儀式を疎かにしたり、魯国の世継ぎ問題に介入したりと、国民や諸侯の信用を欠いていきます。そして異民族との戦いで大敗して国家の弱体化を招き、さらに忠臣を処刑するなど、やはり暗君と言わざるを得ません。

幽王の時代には、周王朝の権威・信用はすでに失墜していたのです!

やがて時代の価値観は、一人の女へとその関心を集中させていくのです。

もしも厲王・宣王・幽王が名君であったならば、「龍の泡に対して君主自らが礼節を持って接する事で、泡は鳳凰か麒麟に変化して、やがて少女から聖人君主が誕生する…」と言うような、いかにも儒者が好みそうなシナリオが後世に残ったのかも知れません。

つまり、褒娰は人の世の憎悪を一身に引き受けたに過ぎない…のではないでしょうか?

天意に背いた暴君暗君が残虐非道な行いで国家を乱し…さらに、その残虐非道な行いが人知を超えた禍々しい力の作用であれば尚更の事…そして、その禍々しい力を持って世の為政者を誑かしたのが常に身近にいた美しい女であったならば…

それを誅するにあたって、これほど分かりやすい「天下の大義」はありません!

…だとしてもです!

褒娰の微笑みは、本当に「奈落へと誘う悪魔の罠」だったのでしょうか?

褒娰の行為は、本当に夏桀末喜や殷紂妲己と同列だと言えるのでしょうか?

幽王が殺された後、褒娰の運命がどうなったのか定かではありません。その後、褒娰は「微笑む」事はあったのでしょうか?願わくば、「勝利へと導く女神の加護」としての彼女の微笑みを捉えてみたいものです…

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西施…、息姫…、驪姫…、夏姫…、楊貴妃…

いつの時代も男は女の美しさに対して、人知を超えた神秘的な力を感じた事でしょう。

それが「女神の加護」なのか「悪魔の罠」なのか…

歴史はその是非を、男の器量次第で決めてきたのかも知れません。

それを「歴史は男社会」という言葉で結論付けるのは簡単です。しかし、それだけでは説明しきれないある種の「儚さ」を感じずにはいられません。それは語り継ぐべき人類の歴史です!

何故なら彼女達は、国をも傾けた美しい女達だったのですから…

ん?うちの嫁ですか?あいやいや~!全然大丈夫ですよ!何一つ傾きませんから…

まあ、敢えて言うなら私が首を「傾げる」くらいですかね…

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参考

◆「史記」(明治書院)
司馬遷 著  吉田賢抗 注釈

◆「列女伝」(平凡社)
劉向 著  中島みどり 訳注

◆褒娰CG画像
徳珍(江慶儀) 制作

◆Wikipedia

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